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「沈黙のひと」 小池真理子 [本]

もう2月ですね。

小池真理子さんの小説を読むのは久しぶり。こないだ石原さとみが主演でスペシャルドラマにもなっていた恋愛小説のイメージが強い作家さんです。けれど、この本は、過去の恋愛が出てきても恋愛小説ではない長編でした。吉川英治賞を受賞された作品です。

主人公の40代後半から50代位の女性編集者と、子供の頃に離婚によって別れた父親との関係、父親の人生、を綴った静かな小説です。タイトルは年老いた父親の病状が段々と進んでしまった状態を示しています。

ページの多くが父親の書簡で構成されていて、そこから過去の家族の歴史が少しずつ明かされます。
人生の終わりを迎えることを知った父親の様々な感情や思いを、残された手紙や日記で後から知る主人公。
作者のお父様がモデルになっているために、おそらく描写が一層真実味をおびていて、あふれ出る感情が胸に迫る箇所がいくつもありました。
この小説ではコミュニケーションはe-mailや電話ではなく、思いをこめた書簡です。

読み終わると、多分年齢的なこともあるでしょうが、自分自身と親のこれからを色々考えてしまいました。
年老いていく親とともに、子供の方は成長しなければいけないのに、私はどうなのかなと。
うちの両親は余り昔のことは話しませんが、よその家族はどうなのかなと。

波乱万丈の人生のようでもありながら、この主人公の父親は幸せだったと思えました。2つ目の家族とある意味幸せに過ごし、1つ目の家族のことも心にかけながら、別のかつての恋人に病床から会いに行きという人生。たくさんの人に愛情を注いで、同時に愛された人だったのだろうなと。そのあたりの心の機微の描写のうまさはいつもの通りです。

父親が書簡をやり取りする女性歌人の、心のこもった思いやりあふれる、人柄のにじみでた手紙が私の心にもあたたかく残りました。そんな言葉をつづるのは、私にはまだまだ無理かも知れません。

なお、闘病治療のなかで胃ろう(胃に直接穴をあけて栄養補給することです)についても触れられていました。最近はネットのトップニュースにもあげられていて、反対意見が増えているようです。どうなっていくのかなと思います。
食べること、話すこと、人と関わってコミュニケーションすること、は人間の存在そのものなのだなと、改めて深く思いました。淡々とした語り口でありながら、心に沁みる小説でした。

本作について作者ご自身が語っておられるページのリンクです。
http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/648?page=4

他に借りた本も面白かったです。

「大阪今昔散歩」はカラー写真も多く、よく歩く大阪の街並みの歴史がわかりやすく興味深く知れます。
奥田英朗の「邪魔」も迷うことなく面白かったです。

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