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「我が家のヒミツ」 奥田英朗 [本]

前の2作との連作らしい。多分読んだけれど、随分前で。。。

短編集。ヒミツがあんまり秘密ではないという感想もあるようですが、本当の意味での秘密ではなく、家族の親密さ、内緒という意味合いもあるのかなと思いました。そのためカタカナが使われているのかも。
最近目が疲れるし、重たい内容の本が段々つらくなってきたこともあり、調度いい感じの小説でした。苦労せずに楽しみながら読了。

奥田さんのこの小説の登場人物は誰もが悪い人ではなく、市井のちょっと良い人ばかり。心のひだや、感情の機微とでもいうものを、どうしてこんなに上手に描けるのか、しかも男女の区別なく。と不思議。読み終わって、家族っていいなあと思うとともに、独り者の私はちょっと寂しくなりました。でも年老いた両親やそれぞれ独立した兄弟とはそんなに仲良くもないしなあと現実に戻ったのでした。

6つのお話のどれもが、何でもない日常を描いているのに、くすりと笑えてほのぼの。

虫歯とピアニスト。子供が出来ないことで色々言ってくる義母にびしっと言ってくれる意外と頼もしい夫。最後のピアニストの再訪のところがクライマックス。

正雄の秋はサラリーマンには身にしみる話で、なんだかな~と思うとともに、わかるわかるとも。最後がすっきりしていい感じ。誰にでも人生がある。ですね。お葬式の電話がクライマックスで起承転結の転ですね。

アンナの十二月は少女たちが主人公。親友たちのアドバイスがナイス。父親に会いに行くところがクライマックスで、まさに小説のような展開。育ての親だなと私も思います。

妊婦と隣人の主人公の主婦には笑いました。エスカレートしていく様が目に浮かびます。追っかけていくところがクライマックス。

手紙に乗せては家族のお話。お手紙を下さる部長がこの短編集の中で一番印象に残った登場人物です。思いやり、大切です。

妻と選挙。自然体の主人公が余りにものびのびで、マイクを持ってしゃべりだすところが、クライマックス。

それぞれのストーリーに小さなクライマックスが盛り込まれています。

男性の心情描写だけではなく女性の心のつぶやきも全然違和感ないのがすごいなあと思っていたけれど、今回はアンナの12月で、少女たちの会話も生でストレートな感じで改めて感心。すごい作家さんですね。

今回ちょっと余りにも皆が良い人で幸せな家族ばっかりだったので、次はむちゃくちゃやってしまう主人公の家族仲良しだけでは終わらない短編集も読んでみたいです。

お勧めです。


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