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「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている」 佐々涼子 [本]

年齢とともに目が疲れるのと、朝が早い生活をしていたので、読書から遠ざかっていましたが、インスタグラムで勧めておられた方がいて、読んでみました。
つい最近はネパールが気になりますが。。。これは東日本大震災についての本です。

震災後に様々なニュースが流れるなか、色んな物が東北で造られていることを知りましたが、雑誌の発行が紙不足で。。というのも聞いたような覚えがないでしょうか。その時は、本や雑誌は直接生活に影響するものではないし、たいしたことではないというような印象でしたが、この本を読んで、その裏でこんなに必死な人々の努力があったのだなと知りました。

日本製紙は日本の出版用紙の4割の製造を担っているとのこと。その主力工場が石巻工場で、この本はその復興までの道のりのドキュメンタリーです。震災被害額は私企業として東電の次だったということに驚きますが、そのほとんどがこの石巻工場の復興にかかったとのこと。被害はどれほどだったことでしょうか。

工場の復興とそれに携わった方々の努力、日々の生活が詳細に、バランスの取れた目線で綴られていて読みやすかったです。工場の中での出来事だけではなく、当時の東北の悲惨な状況が具体的に描かれていて、つらくなる箇所もありますが、同時にほっとするエピソードも盛り込まれています。それで、読んでいて落ち込む、暗くなるということもなく、最後まで読み通せました。

石巻工場の前身は元々昭和三陸大津波や恐慌から東北を復興させるための法律に基づいて設立された会社だったそうです。なんと因果なことでしょう。長く地元に根付いた石巻と共にある企業だということがわかります。

用紙については、自分が担当していた製品のカタログを作ったときに、サンプルを見たりすることはありましたが、今まであまり意識したことはありませんでした。たまにお洒落な和紙を利用した商品を見たりするといいなあと思うぐらいでしょうか。この本に出てくる工場の人々は皆紙造りに誇りをもったプロという感じです。世の中には色んなものを造っているプロがいるのだなあと感心しました。

震災後、機械の釜に入った紙の原料のチップと薬品の液体が、固まって取れなかったという話が出てきます。つい、スムージーをした後に洗わなくてこびりついたミキサーを思い出してしまいましたが、一日作業してたった数センチしか進まない作業をやり続けたという根気強さに頭が下がります。

宣言通りに、たった半年で最初の機械を稼動させる場面がクライマックスですが、その製造に要する時間についての記載に驚きました。パルプを流して紙が出来上がるまでを通紙、紙をつなぐというそうです。この本のタイトルにもなっています。すべてがオートメーションなわけではなく、途中の工程で人の手も入っての作業。通常早くて1時間遅くて数時間かかるのが再操業の際には28分だったとのこと。けれど、そんなに時間差があると、どうやってスケジュールを立てるのだろうとびっくりしつつ、繊細な作業なのだなあと思います。

他にも中間製品が津波で流れて回収したエピソードも印象的でした。

人は希望がないと生きていけないし、底力というものもあるのだなあと強く心に訴える本でした。

因みに図書館で3ヶ月ほど前に予約して借りたのですが、次に全く同じ本を借りたのが後輩でした。。わかった理由は恥ずかしくて言えませんが。

お勧めです。


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