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「陰謀論の正体!」田中 聡 [本]

他の方が感想をあげておられるのを拝見して、読んでみました。難しい学術書ではなく、意外と気楽に読めました。

地震兵器による人工地震説や、9.11テロは自作自演だなどという、有名な陰謀論を取り上げて分析しているのかなあ。とちょっと期待していたのですが、そうではありませんでした。そういった個別の陰謀論については、少しずつ途中で紹介しながら、最初から最後まで、陰謀論とは何かということについて、良い意味で普通の常識人の感覚・観点から淡々と解説された本でした。結局、作者の立場は陰謀論を否定するのでもなく、肯定するのでもなく。ということです。

社会に不安が満ちてくると陰謀論が活躍しだすということは確かにその通りかも知れません。それに、ネット社会が拍車を掛けている。東日本大震災の後の日本はまさにその典型だったようですし、それは今も続いているのかも。

グローバル化して、巨大になり複雑になった現代社会では、自分の身近に起こったことでも、幾らその理由を調べようとしても、情報は溢れているのに、確実なものに行き着くことができない。。それが、陰謀論が出てくる理由の一つ。となると、どうも陰謀論が減ることはなさそうですね。

陰謀する側の団体としてしばしばあげられるらしい、ダン・ブラウンの小説にも出てきたイルミナティについてもちょこっと語られています。他にも、私は知らなくて、へ~、そんな陰謀論があったんだ。というものも。そう、ダン・ブラウンの小説も陰謀論を面白く膨らませて成功したものですね。

 9.11のテロについては、NY帰りの方が、自分の周りでは皆あれは陰謀だと言っているとまことしやかに語っていたのや、標的となった貿易センタービルの住所をWORDでタイプしてフォントをWINGDINGSに変換すると、恐ろしい絵になるという話を思い出します。(正しい住所ではない作られた話だったんですが、NYだけでも変換すると、マイクロソフトの陰謀かとも思います)

本書であげられていた陰謀論に絡む幾つかの事件の中で、関東大震災の後の虐殺の話が、恐ろしく印象に残りました。知りたくないことのような気がして、特に自分で調べることがなかったし、嫌なものにはふたをするように社会全体が語ることが少なく、そのため目にすることも少ないのかも知れません。作者がふれられていた本庄事件をWIKIPEDIAで検索しただけでも、情報の少なさにそれが現れているようです。最近の嫌韓のデモやヘイトスピーチの問題を思い起こさせます。陰謀論にはどうしても人種差別に関わるものも多いようです。

陰謀論は状況証拠ばかりで成り立っているので、完全に肯定は出来ない。けれど、確かなものではないからこそ、完全に否定も出来ない。かつて陰謀論が事実もしくは事実に近かったことも度々。なるほど!

秋の夜長の読書にいかがでしょうか。ちょっとだけ哲学的な気分になって、ふ~む。とうなりたくなります。


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